日本人はいつから働きすぎになったのか

日本人はいつから働きすぎになったのか (平凡社新書)
礫川 全次
平凡社 (2014-08-18)
売り上げランキング: 12,020

日本人の特徴の一つとして「勤勉」があげられることがありますが、現在の過労死したり鬱病になって自殺したりするほどまでに働く人がいるという状況はもはや勤勉という言葉では語れない状況にきてしまっています。
そもそも、勤勉が美徳というのは人間の生き方として本当なのか、なぜ怠惰でいてはいけないのか、という問いかけを行なっています。

勤勉の象徴ともいえる二宮尊徳さんの話は中々面白いです。
本人は勤勉であり、そして勤勉を思想化し、怠惰な農民を勤勉にしようと、勤勉な人には褒賞を与え、怠惰な人には罰を与えたりしたけれど、結局怠惰な農民を勤勉にすることはできなかったそうです。また一方で蓄財にも熱心だったそうで、語り継がれている二宮尊徳像とはちょっと違う一面を持っていたようです。

この本を読んでいて「効率化」の話を思い出しました。
トヨタをはじめとした製造業ではどこもかしこも「カイゼン」という名で、社員全員で効率化を推し進めています。しかーし、極端な話、効率化の結果、今までの半分の時間で同じ作業ができるようになった場合、労働者は今までの半分の時間で同じ給料がもらえるようになるかというとそうではなく、今までの倍の仕事をしなけれなならなくなっています。つまり、カイゼンすればするほど、忙しくなるという状況が生まれています。
パソコンの導入で仕事が楽になったはずなのに、逆に忙しくなってしまったのも同じです。

戦後、高度成長時代に入る前は、17時に退社して家で家族そろって夕食をとるというのがごく普通の生活だったそうです。なんともうらやましい毎日です。

そろそろ、「のんびり」が美徳という考え方に社会全体が変わるべき時期に来ているのではないでしょうか。

~ もくじ ~

序章 日本人と「自発的隷従」
第一章 日本人はいつから勤勉になったのか
第二章 二宮尊徳「神話」の虚実
第三章 二宮尊徳は人を勤勉にさせられたか
第四章 浄土真宗と「勤労のエートス」
第五章 吉田松陰と福沢諭吉
第六章 明治時代に日本人は変貌した
第七章 なぜ日本人は働きすぎるのか
第八章 産業戦士と「最高度の自発性」
第九章 戦後復興から過労死・過労自殺まで
終章 いかにして「勤勉」を超えるか
あとがき
参考文献

~ なるほどな一文 ~ (リンクはInBookの該当セリフのページ)

「勤勉」というのは、美徳だが、「働きすぎ」というのは、美徳であるはずがない。私たち日本人は、大正時代から今日まで、そのことについて「真剣に反省した」ことは、一度もない。(P173)

~ もう一つなるほどな一文 ~ (リンクはInBookの該当セリフのページ)

一方、「日本型経営」において労働者に求められる「自発性」の場合、労働者自身の意識としては、文字通り「自発的」に労働しているわけで、だからこそ、働くことが「生きがい」にもなるのである。しかし実は、それが企業から巧みに誘導された「自発性」、企業に絡めとられた「自発性」にならざるをえないという構造である。(P218)

 
 
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book20140919
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