<面白さ>の研究

(面白さ)の研究  世界観エンタメはなぜブームを生むのか (角川新書)
都留 泰作
KADOKAWA/角川書店 (2015-05-10)
売り上げランキング: 12,467

文化人類学者で漫画家の著者が「世界観エンタメ」というものを定義し、その「世界的エンタメ」がなぜ面白いのか、なぜ人々に受けるのかを、文化人類学的見地から解き明かそうとしています。
まずはじめの方に書かれていた「売れた作品」=「面白い作品」という考え方にはちょっと首をかしげたくなります。
ただ「二度三度と見てしまう作品」=「面白い作品」というのは当っているかもしれません。
もっともこの本の中で面白い作品の例としてあげている作品の中にも、マイナーな作品がいくつかありましたので、作者自身も実は「売れた作品」=「面白い作品」とは思っていなかったのかもしれません。

独自の世界観を作りだしており、読む人見る人をその世界の中に引きづり込んでしまうような作品は確かに面白いです。

さて、この本の内容ですが、共感を受ける部分も多々ありますが、全体的にこの本は、この本の表現を借りれば「面白く」ないんです。
「面白さ」というものを論理的に表現しようとすればするほど、面白くなくなっていくのです。
ただ、作者が自分の理論に酔っていることだけは非常によく伝わってきます。
この本の中にもどういう作品が面白くないのかを書いてありましたが、まさにこの本がその例にぴったりの本です。

結局、自分が好きな作品について、熱く語っているに過ぎない気がするのですが、そこに大量の論理を振りかけたために、その「熱さ」も醒めて伝わってきちゃうのです。

エヴァンゲリオンの作者が自分の作品作りのことを「オナニー・ショー」だと言ったということが、この本にも書いてあります。自分自身をさらけ出したショーだということでしょう。
それに対して、この本は「オナニー」そのものと言えます。自己満足に終わっている世界です。

もっともこの本はエンタメ作品ではないので、作者的には面白くなくてもいいものなのかもしれません。
私自身は、この作者のマンガを読んだことはないので、はたして、どんな面白い世界観エンタメなのか、この本に書かれていたオナニーがどのような形でショー化されているのか、ちょっと気になるところです。

えっ?
面白くないものをただ面白くないと書いているだけのおまえのブログはもっと面白くないって?
おっしゃる通りでございます(^^;

~ もくじ ~

はじめに
序 章 エンタメの研究 - 文化人類学から考える
第一章 空間感覚の研究 - 『スター・ウォーズ』『となりのととろ』『精霊の守り人』
第二章 時空感覚と社会空間の研究 - 『千と千尋の神隠し』『ワンピース』『進撃の巨人』
第三章 人間の世界の研究 - 『踊る大捜査線』『半沢直樹』、そしてゾンビ
第四章 ”居住空間の外”の研究 - 「Jホラー」と『寄生獣』
終 章 私小説的な<世界観エンタメ>の研究 - 『エヴァンゲリオン』と『失踪日記』
おわりに

~ なるほどな一文 ~ (リンクはInBookの該当セリフのページ)

いわゆる大量消費と情報化の果てに、インテリと区別されるべき、「バカで単純な大衆」というものはいなくなってしまった(それとともにインテリも・・・)。残された廃墟に現れたのは、「不特定多数」という新しい唯一神である。(P17)

~ もう一つなるほどな一文 ~ (リンクはInBookの該当セリフのページ)

ちょっと仙人の悟りのようだが、秋葉原に集うオタクたちの姿には、基本的には仙人の姿と重なりあうところが、ないでもない。仙人は、自らを「俗世」から切り離し、自らの環境を極度に単純化することによって全能感を獲得する。同様に、会社のような広い空間では縮こまっているサラリーマンが、狭い自分の部屋でなら自由になり全能感を獲得できる。(P137)

 
 
これで、、、2007年07月13日以降(2874日)、、、
読んだ本   630冊 (1日平均0.22冊)
読んだページ 148885ページ(1日平均51ページ)

book20150525
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